戦後日本における国民生活のあり方について見逃してはならないもう一つの特徴は、世帯主としての夫が外に働きに出る一方、妻は家庭内で家事や保育に専念するという「夫婦分業型」の家族モデルが前提にされてきたことである。
こうした家族のあり方は、「日本型雇用システム」および「企業福祉モデル」と表裏一体の関係にあった。
「日本型雇用システム」のもとでの年功賃金や「企業福祉モデル」のもとでの充実した生活手当があったからこそ、「現役世代の夫」が働くだけで家族全体の生活費や老後の生活費を賄うことができた。
一方、「夫婦分業型家族モデル」のもとで夫が「会社人間」として仕事に没頭することを条件に、企業は年功貸金や手厚い企業福祉を提供したのである。
制度面についても、公的年金における「第三号被保険者制度」(専業主婦が国民年金に加入するに際し保険料支払いが免除される制度)は女性が家庭に入ることを優遇する制度になっているほか、税制面でもいわゆる「一〇三万円の壁」が専業主婦を促進する方向に作用してきた。
また、保育・介護インフラの整備が遅れてきたことも、女性の社会進出を阻害し、結果として「夫婦分業型家族モデル」を促進する要素となってきた。
以上のような「戦後日本型生活安定化システム」が機能してきたことによって、人々は仕事に没頭することができ、ライフプランの将来像を展望することができた。
「企業依存型」システムはなぜ維持できたのか以上の三つの柱からなる戦後日本の「企業依存型」の生活安定化システムは、大企業製造業を牽引役とする高成長経済を「前提」としたものであった。
なぜならば、高成長経済であるからこそ多くの企業が持続的に業績を伸ばし、安定的に雇用を維持することができたからである。
退職者に対する年金支給、社員の家族の生活費まで支給が可能であったのも、高成長下で企業業績が好調であったからにはかならない。
そして、社員の家族に対しても生活費が支給されたため、「夫婦分業型家族モデル」が維持可能となったのである。
一方、「企業依存型」の生活安定化システムは、逆に大企業主導の高成長経済の持続を支える「インフラ」であった。
なぜならば、終身的雇用、企業福祉は従業員の企業に対するモラール(士気)を高める効果を持つからであり、夫婦分業型の家族ゆえに男性正社員は仕事に没頭することができた。
こうしていわゆる「会社人間」が一般化し、日本企業の成長の原動力となく、一九八〇年代までの日本経済の高い成長を支えたのである。
システムの機能不全化がもたらしたもの機能不全で露呈した様々な問題雇用・生活不安発生のメカニズム以上のように、「企業依存型」の戦後日本型生活安定化システムを基盤とした「高成長の持続」と「国民生活水準の向上」の好循環は一九八〇年代頃までみられた。
しかし、一九七〇年代終わり頃から八〇年代にかけて、この好循環を崩す環境変化が徐々に進行していった。
そして、この経済環境の変化に伴い、「企業依存型」の生活安定化システムは、機能不全に陥ることになる。
その主因は、第2章で詳しく論じたように、@国民生活水準の向上、A新興工業国の台頭、B情報技術革新、C少子高齢化の進展、といった環境変化により、システムの中核に位置する「日本型雇用システム」が機能不全を起こしたことにある。
そして、「日本型雇用システム」の機能不全のもとでかつての企業と個人の信頼関係に綻びが生じ、雇用不安や職場におけるストレスの高まり、さらには労働時間の二極化がみられた。
また、既存正社員の雇用維持のために新卒採用を減らし続けたことが、若年就労問題を惹起し、三〇代後半以上になっても定職に就けない「中年フリーター」を生み出しつつある。
加えて、「日本型雇用システム」のもとでの「ラスト・リゾート」であった公共事業を通じた雇用創出のメカニズムが破綻したことが、社会の底辺で生きる人々の生活を一段と苦ししているのは、これまでみてきた通りである。
さらに、戦後日本社会で進行した様々な環境変化は、「企業依存型福祉システム」および「夫婦分業型家族システム」という二つのサブ・システムに対しても、機能不全をもたらす方向に作用した。
そして、これらのサブ・システムの機能不全は、「戦後日本型雇用システム」の機能不全の影響と相まって、すでにみてきた様々な問題⊥@雇用不安の構造的な高まり、A過労死・過労自殺問題、B若年就労問題、C貧困層の増大の発生原因になってきたことに加え、D少子化の加速、および、E年金不安・老後不安、という、労働現場の「外」にも深刻な社会問題を生み出す要因になってきたのである。
具体的には、まず、「少子高齢化の進展」が、経済成長率の低下に伴う企業の人件費コスト増大と相まって、「企業依存型福祉システム」の維持を困難化する要因となっていった。
医療技術の向上、栄養状態改善を背景として平均寿命が着実に伸び、老齢人口が急速に増えていったことは、出生率の低下と相まって老齢人口比率の急激な上昇を招いている。
一九九〇年には一二%であった六五歳以上人口比率は二〇〇五年には二〇%強まで上昇し、二〇五〇年代前半には四〇%に達すると予想されている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」二〇〇六年一二月、出生中位・死亡中位推計)。
こうした少子高齢化の進行のもとで社会保障制度を維持するためには、@給付水準のカット、あるいは、A社会保険料や租税負担の一段の引上げが必要になる。
前者は「年金不安・老後不安」の要因となる一方、後者は企業の雇用インセンティブを低下させ、低賃金雇用の増加をもたらすため、「雇用不安の構造的な高まり」や「若年就労問題」、「貧困層の増大」を助長させる要因になる。
また、「国民生活水準の向上」を背景とする教育水準の高まりを契機に女性の社会進出が広がっていったことが、「夫婦分業型家族システム」を弱体化させ、結果として少子化の進行や子育て機能の低下につながっていった。
教育水準の向上・家電の発達等による家事負担の軽減を背景とした女性の「自立意識」の高まりは、男女雇用機会均等法の成立もあり、女性の社会進出を着実に進めてきた。
しかし、「夫婦分業型家族システム」のもとで保育環境が未整備な状況下、働く女性が子供を持つことは様々な困難を強いることとなり、結果として少子化を加速させる要因になってきたのである。
ちなみに、合計特殊出生率の変動要因を@女性の賃金水準、A教育費、B保育所普及率により、都道府県別データをもとに回帰分析した結果によれば、女性の賃金水準の符号はマイナス、教育費の符号はマイナス、保育所普及率の符号はプラスとなっている。
すなわち、女性の社会進出に伴う女性の賃金水準の上昇は、「機会費用」を大きくすることでそれ自体は出生率にマイナスに影響し、教育費の上昇も子供を育てるコストを引き上げることで出生率を押し下げる方向に作用している。
欧米先進国では、男女ともに仕事と育児の両立がなされやすい環境が整えられることで出生率の低下に歯止めがかけられてきているが、わが国では保育インフラが未整備なことが前述のマイナス作用を増幅させ、出生率を大きく押し下げていると解釈される(図このように、「夫婦分業型家族システム」が時代の変化により機能不全に陥ったことが、少子化進行の大きな原因だということができるが、「若年就労問題」が少子化の一つの背景になっているとの見方もある。
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一定レベルの能力に達しない場合には派遣されないことも考えられますが、「内定ゼローフリーター」よりはるかに前向きな選択です。
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4月の入社までにやっておくべきことはありますか?自分の好きなことを徹底的にやっておこう「入社までにワードとエクセルはマスターしておいてください」「外資系なんで、英語は仕事で使えるレベルまでやっておいてね」。
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企業からいわれた以上、しっかりと取り組んでおくべきです。
はじめから落ちこぼれていては、能力主義の企業では生き残っていけません。
また、特にいわれない場合でも、業界の理解を深めておくことをお勧めします。
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